【スタートアップ・経営者インタビュー】株式会社JX通信社(vingow運営会社)米重社長
スタートアップ・経営者インタビュー第二回は、サイバーエージェントベンチャーズとネットエイジから資金調達をおこない、ブレインメディア『vingow』をリリースする中、業界の注目を集める弱冠23歳のJX通信社米重社長。vingowのメジャーアップデートを直前に控え、起業に至った経緯、vingowについて、そして中長期目標について神妙な面持ちでお話いただきました。オーバーグラウンド・イノベーションの独占インタビューです。
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OI:本日はお忙しい中、ありがとうございます。
米重社長:こちらこそありがとうございます。
OI:まず、御社の事業内容を教えていただけますでしょうか?
米重社長:事業内容としては、新しい情報エンジンとしての「vingow(ビンゴー)」の開発と、twitter、Facebookを核としたプロモーションのお手伝いをする「ソーシャルメディアマーケティング事業」の2つを主に行っております。
【神妙な面持ちのJX通信社の皆さん】
OI:なるほど。起業される前は何をされてたんでしょうか?
米重社長:大学1年生でしたので、起業準備のほかに学生としての生活、あとは塾講師のアルバイトなどもしておりました。
OI:起業した経緯をお聞かせいただけますか?
米重社長:中学生の頃に航空業界に興味を持ち、航空会社を作りたいと考えるようになったのがきっかけでした。当時から現在に至るまで、日本の航空業界は高すぎる運賃や公租公課、過剰な規制といった問題が目立ち、世界のなかでもLCCが沢山生まれ、発展している欧米、東南アジアなどに大きく遅れをとっていました。就職という形で航空業界に入って変革に取り組むことも多少考えましたが、入社して20~30年かけて昇進したところで何が出来るのか疑問があり、その頃入った会社が残っているかどうかすら怪しいということで「自分で立ち上げた方が圧倒的に早いだろう」という結論に至りました。
この考えは今でも変わっておらず、いずれ遠くないうちに航空業界に取り組みたいと思っています。ただ、当然いきなり航空会社を設立しようというのは資金、ノウハウなどあらゆる面でハードルが高すぎるため、より参入障壁が低く、自分自身強い問題意識を持てる業界でまず起業し、資金集めなどもしようと考えました。
そこで気になったのがメディアの分野でした。高校生の頃から「Webではニュースはタダ」という状態、そしてそれが既存のマスメディアに及ぼす悪影響が非常に気になっており、これを解決できるビジネスモデルを作った者が次代のルパート・マードックやマイケル・ブルームバーグになるだろう、と考えていました。
そこで、課金、広告しかないWebニュースメディアのビジネスモデルに「コンテンツ売買」という第3の収益源を加えるWeb上の「仮想通信社」事業を発案し、これの実現に向けて大学1年の時に「JX通信社」を設立しました。消費者に届くべき情報がリアルタイムで、必要な質・量をもって届くようにする、という「仮想通信社」事業の理想、コンセプトはvingowにも一貫して取り入れられているものです。
OI:学生でソーシャルメディアマーケティング周りで起業は珍しい気もするのですが(ソーシャルアプリは多いですが)、何か狙いがあったのでしょうか?
米重社長:最初に「ソーシャルメディアマーケティング」での起業を考えたわけではなく、「通信社」という社名のとおり、ニュースコンテンツの配信をWeb上で行う事業を模索しておりました。その前段階としてWebメディア(PC、モバイル)と紙媒体を組み合わせた訪日外国人向けのクロスメディア事業を始めたのですが、これが売上にならなかったためにWeb制作などの事業も始めました。ソーシャルメディアマーケティングは、その一環でクライアントからtwitterの施策についてサポートを依頼されたのをきっかけに2009年半ばから少しずつ立ち上げていきました。
OI:そのtwitterでの実績がvingowに繋がるワケですね。vingowについて詳しくお聞かせいただけますでしょうか?
米重社長:vingowは「勝手に、あなた好みに、情報を整理」する、新しい情報エンジンです。自分の好みの情報トピック(タグ)をフォローしておくと、ソーシャルやWeb上から収集された情報が自動で”あなた好み”にカスタマイズされて提供されます。vingowではユーザーは、Googleやtwitterのように「どう情報を探すか(得るか)」を考える必要なく、知りたかった情報、ニュースを得ることができます。検索エンジン(アルゴリズム)の良さとソーシャルメディア(ソーシャルフィルタリング)の良さを取り入れ、短所を無くした新しい「ブレインメディア」として提案しています。
OI:検索ではキーワードがわからないと検索しようがないですよね。またソーシャルグラフは【人】が軸になります。友達が少ない人、積極的にフォローをしない人はなかなか情報に辿り付けません。ここを解決できるのが御社のvingowという理解でよろしいでしょうか?
米重社長:仰る通りです。検索だとまず「どうキーワードを組み合わせて知りたいことを探すか」を考え、実際に試行錯誤して情報を得なければなりません。つまり、情報を得るまでのプロセスが長く面倒臭いということがあります。これは一定のITリテラシーがある人でないと、思うように使いこなすことができません。
私たちは普段Webに慣れ親しみ”過ぎて”いるので気づきにくい点ですが、こうして検索エンジンをまともに使いこなせている人は全ネット人口の10%もいれば多すぎるくらいではないか、と思っています。ソーシャルはソーシャルで、情報収集に向かない問題があります。ソーシャルメディアの利用目的は「コミュニケーション」と「情報収集」の2つだと思いますが、特に前者が基点になっているので仰るように知人、友人が少ない、あるいは知りたい方面のことに詳しい人の存在を知らないと情報収集には使えません。
そして、その問題がクリアされている人も「ノイズ」と「偏り」には囚われ続けます。twitterで情報収集といっても、TLに流れてくるつぶやきの95%くらいは「○○と渋谷で飯を食った」とか、どうでも良い話ではないでしょうか。
OI:お世辞抜きで(笑)素晴らしいと思います。みんな気づいてるけど、サービス化できていませんでした。さらに詳しくお聞かせ頂きたいのですが、カスタマイズされた情報ということなのですが、これはどういうものなのでしょうか?
米重社長:vingowでは、ユーザーがフォローした情報のトピック(タグ)を軸に、ユーザー毎に好み(であろうと思われる)の情報を配信しています。例えば私は航空業界の研究を専門にやっているので、「航空会社」などの関連タグをフォローしていますが、その結果、私のvingow画面には世界中の航空会社の新サービスや提携、破綻といった動向がつぶさに入ってきます。
以前は同じことをRSSやGoogleNewsの検索機能などを使ってやっていたのですが、我ながら精度の高さ、質・量の充実にも驚いています。vingowに流れてくる記事自体は、vingowのユーザーがソーシャル上などで気になった記事を拾ってくることで集まっています。これらを全て、vingowのアルゴリズムが自動解析して自動でタグ付けしているので、ユーザーは画面を眺めているだけで良いことになります。
JX通信社 米重社長
OI:情報がどんどん勝手に流れてくるという点では、テレビに近い感じですね。私もすでにvingowを使わせていただきましたが、正直想定していたよりも高い精度で多くの情報が手に入ることに驚きました。
米重社長:昨年末からクローズドβの提供を限定で開始しましたが、これに対していただいたフィードバックを反映したメジャーアップデートを準備しています。特に力を入れているのがUIですが、例えば今は見られない写真もvingow内で見られるようになったり、記事が更に読みやすくなったりといった改善や、アルゴリズムの精度向上、あと現在はまだ公表出来ないのですが、日頃ソーシャルメディアで情報収集している人もvingowを使わずにはいられないような新機能も準備しています。
現在はまだ私たちの構想上のvingowとはかけ離れた、ごくごく初期の状態のものなのですが、このアップデートで対応する部分が今後出てくるであろう競合サービスに対する差別化のポイントになると考えています。
OI:【日頃ソーシャルメディアで情報収集している人もvingowを使わずにはいられないような新機能】というのはかなり気になります(笑)。今回のサービスを開発するにあたり、競合とお考えのサービスはありますでしょうか?
米重社長:競合するのは、同じ利用目的で、同じユーザー層を奪い合うサービスということになりますが、国内ではそれはまだ見当たりません。海外では、アメリカのソーシャルニュースリーダー「Flipboard」や「Zite」などが競合すると考えていますが、彼らが視覚的な部分(表側)から力を入れてきている分、私たちは裏側から、それも技術的により難しい日本語の言語解析から入っているため一歩先を行ったアプローチができます。
Flipboardは先日のiPhone版が1週間で100万もDLされるなど非常に好評を博していますが、「日頃の情報収集」というのは究極的には誰にでもあるニーズで、市場規模もそれだけ巨大だと言えると思います。そこにアプローチして、全世界数十億人を対象にしたサービスにしていきたいと考えています。
OI:Flipboardもかなり注目されています。vingowとFlipboardの違いはどういった点でしょうか?
米重社長:Flipboardは、あくまで「次世代RSS/ソーシャルニュースリーダー」で、情報のソースを自ら探さなければならないという点で進歩がありません。「表側」のUIは非常に優れており、それだけでも小さなイノベーションと言って良いと思いますが、vingowはまずより本質的な「裏側」から取り組み、人間が「どう情報を探すか」などを一切考えずに済むようなサービスとして創っています。人間の貴重なリソースは、「どう情報を探すか」ではなく「探し、得た情報をもとに何を考えるか/行動するか」にこそ向けられるべきです。この点が全く異なる部分です。
OI:サービスのコンセプト設計がかなりしっかりされているのですが、これはどのように身につけたのでしょうか?
米重社長:意識してコンセプト設計から入っているというよりは、元々「問題解決ありき」で全てやっています。起業自体のきっかけもそうですし、ソーシャルメディアマーケティング事業もお客様から問題解決を依頼されて始めました。vingowも、「自由でオープン」が理想のWebならもっと楽に、十分な情報収集ができて当然なのになぜ誰もやらないのか、という問題意識から出発して自然にサービスとして形になっています。
OI:無理やりコンセプトありきではなく、日々の生活、ビジネスの中から出てきた問題に対して自然な答え、それが今回でいえばvingowだったんですね。
米重社長:そういう事になると思います。
OI:vingowのマネタイズはどのようなものをお考えでしょうか?
米重社長:vingowは主に、課金、広告、API提供の3つを収益源として考えています。今後、個人/法人でvingowをもっと便利に使えるプラスアルファの機能を提供しますが、それを一部有償で提供する予定です。
広告については中長期で取り組みますが、vingowが持っている極めて質の高いインタレストグラフを活かした、革命的な広告プラットフォームの展開を準備しています。APIについては外部サービスとの提携や、vingowの技術・リソースを活かした新しい別なサービスへの活用のために無償/有償での提供を検討しています。
OI:vingowはインタレストの集積場になっているのでインタレストグラフを用いた広告は、かなり期待できます。課金についてなのですが、優良ユーザーへのプランはどのようなものになりますでしょうか?
米重社長:現在公表出来る部分と出来ない部分とがあるのですが、公表出来る部分としては、個人ではなく会社の部署や研究チーム、大学のゼミなど集団で共通のテーマで情報収集する時に、その内容の共有ができるようなものを準備しています。つまり、皆で情報収集やそれをもとにした議論、知見の共有が効率的にできるということです。私たちが自分で使うなら、競合サービスのウォッチングに使うと思います(笑)
OI:(笑)。vingowのモデルは海外展開もしやすいイメージなのですが、アジアやその他地域への進出はお考えでしょうか?また具体的な時期もあれば、教えていただけますでしょうか。
米重社長:海外展開は当初から考えています。どの地域にいつ、ということはまだ全く決まっていませんが、様々な準備は行っているところです。まずは日本国内でvingowのサービスとしての機能がひと揃いして、確立してからそれらを海外に一気に持っていく仕組みを取れればと思っています。
OI:では、最後の質問をさせてください。米重さんがJX通信社を通して世の中に提供したいバリューはどのようなものでしょうか?また中長期のビジョンも是非お聞かせください。
米重社長:JX通信社は「伝えることが、仕事です」という企業コンセプトを持って活動しています。人々がWebを通して情報収集する時に、建前通り「自由でオープン」にそれが可能になるように、まずはvingowを作り上げていきます。
中長期では、そこから派生して人々が情報を発信する時にも、それが届くべき人にちゃんと届く仕組みづくり、また、vingowの最良のインタレストグラフを活かした広告・コンテンツプラットフォームの構築を行っていきます。経済を動かすのはヒト、モノ、カネの3つだと言われていますが、それらを根元で動かすのは「情報」です。まずはこの「情報」の部分を、スムーズにあるべき姿で循環させるしくみを作り、世界の人々の日常生活の向上に貢献したいと思っています。
現在は情報過多の時代と言われますが、個々の人にとって「過多」なのはあくまで情報自体ではなくノイズで、必要な情報ならいくらでも欲しいというのが実際です。その本質的なニーズに応えたサービスとしてvingowを育てていければと考えています。
【引き続き神妙な面持ちのJX通信社の皆さん】
[米重社長おすすめの一冊]
個人的に、起業家、実業家という枠を超えて「変革者」として行動した人として、澁澤栄一とマイケル・ブルームバーグを尊敬しています。「一冊」には絞れていませんが、澁澤栄一の言行録である「論語と算盤」、マイケル・ブルームバーグの自伝である「BloombergbyBloomberg」を挙げたいと思います。
前者は100年近く前、後者も15年ほど前と古い本ですが、それぞれ人間として、商売人としてどうあるべきかという心構えと、”変革”のために実際にどう行動すべきかというドキュメンタリーとを読み、学ぶことが出来ます。読み返すたびに思いを強くできる本です。
【編集後記】
ビジネスの設計や将来のビジョン、航空業界に関する知見などとても20代前半とは思えない米重社長。非常にソフトで人当たりもいいのですが、目標達成に対するマインドは誰よりも強く持っているという印象を受けました。vingowのメジャーアップデート、期待大です。




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